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設計事例

母と暮らした古民家を再生する家

リフォーム・リノベーション

母と暮らした古民家を再生する家

桜井市 N邸  2013年7月

nanomachi.co.ltd

こんな家にしたい

●雨漏りの改善
●耐震性の向上
●祖母の部屋とお手洗いとの関係を改善
●祖母の車椅子で室内を移動する為に玄関からすべて段差を解消する
●暮らしやすさの向上と水周りのやり替え
●暑さ寒さの改善
●南側空地からの玄関を設置
●傾いている北側の門塀の改修
●本が大変多いので壁一面の棚が欲しい

 

建物の所見と設計コンセプト

建物は築70年ほどの古民家です。
住まい手さんは以前ここに住んでられた祖母と娘さん御夫婦。
現在は遠く離れて居住しており、こちらには時より来られる程度でした。
ただこの家が御家族全員大好きなこともあって、どうしても住み易く
リフォームしたいという御希望からこのお話が始まりました。

台所周りの屋根周りが特に傷んでいて、雨の日はかなり天井から降って
いた模様。 雨の降った翌日は竈周りが水浸しなんてことも。
当然ここを離れてから手を入れることがなかったため、私はここに立つと
何十年か以前にタイムスリップしたかのような印象がありました。

また、雨漏りもそうですが、祖母と一緒にこちらに来ると50cmの床の
段差を車椅子で登り降りすることに大変さがあることも問題点の一つで、
これを解決する事も私の課題の一つとなりました。

建物自体は傾きや痛み、沈下なども少なくて良好と言えるでしよう。
現状を把握し検討の結果、雨漏りの激しい屋根の改修を行うこととする。

現在は大屋根が東側台所部と西側住居部の二つあるうち、東側の屋根を
一旦撤去し母屋のみ残した上で野地からやりかえる。
その際、重い日本瓦ではなく軽いガルバリウム鋼板葺きにする。

古民家で一番問題になるのは寒さ対策。
今回、壁及び天井部分に対しては外部に面する部分及び改修部分と
非改修部分との間に吹付け型の発砲断熱材(アイシネン)を充填、
床下は改修部の全範囲においてしっかりとした断熱工事(グラスウール
32K厚60)を敷きこむ事で気密性を向上させます。
開口部は複層ガラスへすべて入れ替えます。

祖母の部屋とお手洗いについては、予定の部屋の押入れをはさんだ
向かいのブロックにあるお手洗いとを繋ぎ、床高さの段差も解消させる。
また車椅子で動くために玄関前にスロープをとり、室内ではバリアフリー
とする。

水周りについては現在の台所とその奥の納戸を繋ぎその空間に、
ダイニング・キッチン・洗面所・浴室・お手洗いを使いやすい配置で
新たに設置する。

2階への階段は暗く余りにも急なので、明るくゆったりと登れる階段へ
作り替える。
その他、寝室や収納、仕事スペースや洋室などを確保する。

 

現場の様子等は、私(浅野)のブログ【さあ、住まいの話をしましょうか】
(母と暮らした古民家を再生する家)にてご紹介しています。

 

まず、現況の様子から。

建物の外観から。
南側に大きな空地(駐車場)を持つ家で、道が狭いにもかかわらず、工事に
必要な空間がある事は珍しく、嬉しい。

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但しこの写真には改修目的の母屋はほとんど見えていない。
手前左には物置小屋、右は小屋群(風呂・便所・その他)がある。
今回右側の建物は撤去する。

工事着手して撤去の済んだところ

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これでやっと母屋が見えるようになりました(白いシートの建物)

事の始めは、「この住まい(母屋)、雨が降ると台所が水浸しになるんです。」
から始まりました。

現地を見せて頂くと、台所の真ん中に窯があり、その周りが水浸し状態!

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上を見あげると・・・

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屋根の煙突周りから、雨がダダ漏れ状態になっています。
そりゃあ、水浸しだわ。

台所の奥は納戸になっています。
古い食器や台など沢山積み上げています。

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今回私はこの納戸周りに新たな水廻りをつくり、以前の台所を大きなリビングに
しようと考えています。
その際、部屋の広さを確保するために、少し増築も考えています。

 

もう一つの問題は、お母さんの車いすが家の中に入るのに一苦労なんです。

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建物の裏玄関の敷居をまたぎ、中へ入るとこの段差が待っています。
この約50cmの段差を人の手で車椅子ごと持ち上げていると聞き、
大変な苦労だと感じ入りました。

これは必ず解決は必要だ。

私はこの解決法として、屋内ではなく屋外でスロープをつくり、
段差のほとんどない状態で玄関に入るようにする計画を提案します。

そうすれば、家の中のどこを動いでも段差のない住まいに出来ますので。
古民家に限らず、家の中に段差があるのは使えません。
新築もリフォームも、段差解消は設計の基本ですね。

 

通り土間の先には正面入口の玄関ドアが見えます。
このドアはほとんど使う事は無いらしいですが、正式な玄関ですので、
お寺さんなどの来客の方が使われているようです。
これも動きにくくなっていることと、つっかえ棒の建具は交換します。

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外壁に戻ります。

築70年と言う事で、外部もかなり傷んでいます。
外壁も補修する必要がありますね。

外部に露出した柱や土台も傷んでいますのでこれも補修です。
また、木製建具類も使えません。 断熱サッシに交換します。

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当然ですが、外壁も玄関周りもやり替え予定です。

中の和室に戻ります。

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設えですが、御洒落ですよね。綺麗です。

畳下もやはり傷んでいるようですので、これもやり替えします。
勿論、その際に断熱材も敷き込みます。

 

お母さんの部屋もご希望でした。
これは住まい手さんから南側の部屋の1つをお母さん用にしてほしいと
ご希望がありました。

では、お母さんの個室をつくりましょう。

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実は、この部屋の西側に手洗いとトイレがあるのです。
私は、お母さんの部屋から直接そのトイレに出入りできる通路も
確保したいと思っています。

次は2階です。

玄関土間に面して物置への簀戸があり、それを開けると2階への
階段が出てきます。

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おー!  こんな急な階段、這って上がるの?
しかも折れ階段!
おまけに2階は真っ暗・・・(マジホント)

上から見た写真もお見せしますね。

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手すりが無く、キョーレツに急な階段。
でも、住まい手の奥さんは、「昔はこれで上がってました」
なんて言うし。。。
これ、マジで落ちますよ、ホント。

当然ですが、階段はつくり替えます。
ええ、つくり替えますとも。 こんなの使いません。

 

2階の様子

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写真は明るいですが、これを撮っているときはシャッター空きっぱなしで
実際はほとんど真っ暗状態です。

階段を上がった隣りにこれまた真っ暗な部屋が・・・

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これもそれなりに見えていますが、実際は真っ暗。
細いスリットの光が入っていますが、それでも中は真っ暗。
シャッター空きっぱなしで、5秒経っても10秒経っても閉じない。
床は真っ黒。
天井も真っ黒。
こわーーーい。

お聞きすると、昔ここはそうめんを保存しておく部屋だったそうで。
現像して初めてこんな部屋だったんだ、と理解しました。

この部屋、ちゃんと開口を取れば結構良い部屋になるかも・・・
寝室なんか良いかも。 と思いました。

2階の他のスペースです。

ここは南北に窓があって、明るい空間になっています。

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昔、奥さんが子供のころ、ここで暮らしていたそうで、当時の雑誌や週刊誌など
が積み上げていたり、壁にはソ連が書かれていた地図も貼っています。

うーん、ここだけ時間が止まってたんだねぇ。

ここは洗いを掛ければ十分生活できそう。
床を貼って、窓を交換する事にしましょう。

 

 

*********

設計が終わり、現場が始まりました。

まずは、和室4間から手を付けます。
いつもの通り、下地からめくり上げて撤去します。

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その際に柱脚周りの補修です。
今回は中央の主柱の沈下を調整します。

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柱脚部を大きなベースにするためにコンクリートを打ちます。
勿論、柱は固定せず動けるようになっています。

束石

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土台、大引き、根太と進めて行きます。
その際に一緒に耐震補強を行います。

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床組みが終わると、こんな感じ。

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真新しい杉板が、床下地に貼られています。
この上に畳を敷くと終了です。
2階の床(小屋)部分の補強も行います。

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以前、台所の部分は、雨水が持っていた経緯もあるので、屋根は撤去して
新たにガルバリウム鋼板の屋根を葺きます。

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ここはリビングダイニングとするために、空間を少し広げます。
増築部分はちゃんと基礎をつくり、新たにヒノキで軸を組み上げます。

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屋根を架け始めました。

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床下地を組むと、下には断熱材をしっかりと敷き込みます。

更にその外側には広いデッキをつくるつもりですので、
デッキの下地用基礎をつくります。

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次は、内部壁の断熱作業に掛かります。

リビング

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寝室

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玄関

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この断熱材は、吹付発砲タイプのアイシネンという商品です。
ウレタンフォームを使わないで、ほとんど水と空気で発砲しますので、
作業をしている傍にいても、何も影響ありません。
新たに天井をつくる部分や外部に面する壁は、すべてこれで囲います。

外壁も現在の壁の傷んだ部分や隙間を補修した後、防水紙を張り、
その上から焼杉板を貼ります。

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この写真で、以前あった木製建具はすべて撤去して、断熱サッシに交換しています。
サッシが黒いのは、外壁の焼杉の色に合わせているからです。

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一気に真っ黒な建物に変わってしまいましたね。
これ、近くで見ると、結構高級感あります。

内部も仕事は終わりに近づいてきました。

吹き抜けの書棚制作

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下は塗装済、上はこれからですね。

nanomachi.co.ltd階段です。
パイン材の上にカラーオイルワックスを塗っています。

玄関ドアも出来上がってきました。

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ヒノキで制作しています。
格子の内側には断熱複層ガラスが入っています。
勿論、鍵も高性能なものを取り付けています。

玄関に取り付きました。

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おー、框も大きくて高級な格子ドアになりました。
ちなみに、網戸も別にあります。
通り抜けの玄関には、風通しが大切ですからね。

 

 

さあ、現場が終わり、完成となりました。

完成した様子をご紹介します。

まず、外部から。

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乗用車でここまで乗り付け、車いすと一緒にスロープを登って頂きます。
スロープ勾配は緩く作っていますので、登るのに苦はありません。

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スロープを登ったところが玄関(裏面)になります。
登り終えたところに少したまり場を設けましたので、ここで止まって頂き
ドアを引いて開けて頂きます。

きっと今後ここがメインの玄関になるのでしょうね。

玄関へ入ります。

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玄関を抜けると正面に階段が見えます。
あの急な階段ではなく、緩い、そしてゆったりの広さを持つ階段です。

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リビングはこの様になっています。
何もないので、がらんとしていますね。

もう少し進みますと、

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そして、

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外部のデッキからは、、この様に。

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すすみますと、

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正面に見えるカウンターの内側がキッチンです。
浴室・洗面へは横の通路を進みます。

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キッチンスペース

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もう、奈の町では見慣れた食器収納ですね。
チョッと違うところは、キッチンの長さが3.000㎜ある事でしょうか。
広いです。
それに合わせて食器収納も長くなっています。

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洗面所です。

以前にあった開口部を出来るだけ使うとこの様になりました。
明るくて気持ち良い空間ですよ。

今回は、鏡に照明を埋め込みました。
分かりますか?

次はお手洗いです。

入口の階段横を奥に行くとお手洗いになります。
ここは、以前階段のあった物置スペースです。

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以前からありました格子を使って、内側にインナーサッシを取り付けました。

今度は4間取りの和室へ向かいます。

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和室へ

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奥の扉の向こうがお母さんの個室です。
完成時には既に住まわれておりましたので、写真は間に合いませんでした。

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床はすべてやり直し、畳は交換、壁は最終的には塗り直しました。
分かり難いですが、空間が少し清々しい感じになりました。

玄関土間

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右手嵌め殺し障子

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左手側玄関外より

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では、戻りまして2階へ上がりましょうか。

 

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階段を登ります。

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ゆったりと登るために折り返しもつくりました。

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左手が寝室、奥が仕事場になっています。

寝室です。

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仕事場です。

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ここは、すごく楽しい場所で、

このデスクに座ると、こんな感じで見えるのです。

nanomachi.co.ltd.

nanomachi.co.ltd

気持ちイイですね。

さて、ぼちぼち最後になりました。

 

2階の部屋ですね。

まず、クローゼットです。
勾配天井を使って収納にしました。

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最後は2階の2間になります。
ここは現状の天井をそのまま使っています。
床はパイン、壁はクロス、開口部は断熱サッシに交換しています。

子供さんたちが奈良に着た際の宿泊所になっているようで。

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私は本当に良い住まい手さんと出会えて幸せだと思います。

 

浅野勝義/奈の町

2017年6月

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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