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良質な中古住宅の選び方

 

良質な中古住宅の選び方

最近、私が設計監理を務めた住宅が売却されました。これは、奈良に移る前(大阪での個人事務所時)に設計した住まいです。

当時は構造計算をしていませんでしたが、それでもしっかりとした建物を建てることができました。もちろん、建築確認及び検査済証は取得しています。20年以上の歳月を経ても、住まい手の方は雨漏りなどの修繕やメンテナンスを一度も行っていないとのことでした。基本的な修繕や外壁の塗り替えを一度も必要とせずに済んだという事実は、設計者として大変嬉しく思います。

そこで今回は、私が考える良質な中古住宅の選び方についてお話ししたいと思います。次の4つの点に注意して中古物件を探していただければと思います。

目次

  1. 建築確認・検査済証のある建物
  2. 2000年以降に建てられた建物の特徴
    1. その理由1: 断熱性の向上
    2. その理由2: 耐震基準の改正
  3. 敷地境界が明確な物件
  4. 専門家による既存建物の現況調査を実施して購入
  5. まとめ

 

建築確認・検査済証のある建物

多くの方がご存じの通り、建物を建築する際には建築確認が必須です。ここで簡単に説明すると、建築基準法第6条により、「建築主は建築主事または指定確認検査機関に確認申請書を提出し、その確認を受け、確認済証を交付されなければ建築を行うことはできない」と定められています。また、建築中の中間検査および完成時の完了検査を受け、検査済証を発行してもらう必要があります

かつては、建築確認を受けずに建物を建築するケースや、図面上は法に適合しているものの、実際には法令を無視した違法な建築が行われることがありました。私が2002年に大阪から奈良へ事務所を移転した時、大阪では建築確認や完了検査が常識でしたが、奈良では検査を受けることが珍しいとされていた時期がありました。完了検査を受けていないというのは、実際には建築確認に準じた建物が建てられていないことを意味していました。

一般的に、建物を見ればその合法性は大体判断できます。例えば、商業地域ではないにも関わらず、敷地いっぱいに建物が建てられている場合、それは建蔽率違反の違法建築であることが明らかです。狭い道路に接して建つ2階建ての建物、建て替えにもかかわらず道路の中心線から後退せずに以前の境界線沿いに塀を建てる家、道幅4メートル程度の道路に隣接して建つ3階建ての家など、見ればすぐに違法性がわかるはずです。

こういった違法な家を購入し、そのまま使用することは避けるべきです。建築基準法に基づいた適切な後退や建蔽率の確保を行った建て替えが必要になるでしょう。建て替えるとなれば、解体費用と新たな建築費が発生し、予算も多く必要となります。

確認済証と検査済証があるということは、その建物が法律を遵守して建築された証明であり、重要なポイントです違法建物に対して融資を行わない金融機関が多いのも、それが理由です。

 

 

2000年以降に建てられた建物の特徴

その理由1: 断熱性の向上

断熱性に関しては、1999年以降に建てられた建物が注目されます。これは「次世代省エネルギー基準」と称される1999年3月に改正された断熱基準が導入されたためです。この改正により、それまで先進国の中で低かった日本の住宅の断熱基準が、ようやく欧米の最低レベルに到達しました。ただし、この時点では努力義務であり、一般に普及するにはまだ時間が必要でした。当社では2002年から設計の標準仕様としてこの省エネ基準が採用されていましたが、他の会社ではまだ普及しているとは言えませんでした。

つまり、断熱や気密の重要性が認識されていなかった時代であり、多くの日本の住宅には採用されていなかったということです。これは、2000年以前の建物には地域ごとの断熱材の規定や、断熱・気密施工の仕様が不十分だったことを意味しています(2000年以降の建物でも、適切な断熱材と気密施工が行われている例は少ないですが)。

 

その理由2: 耐震基準の改正

耐震性の基準は主に2つに分けられます。1981年5月以前の旧耐震基準と、それ以降の新耐震基準です。多くの方が知っていると思いますが、2000年6月の耐震基準改正が特に重要です。この改正では、壁のバランス配置と接合金物の使用が新たに規定されました。木造住宅の設計では、新耐震基準の下で建てられたとしても、2000年以前に建てられた建物は耐震診断の結果、耐震性が不足していることが多く、耐震補強が必要になっています。2000年以降に建てられた建物であれば、現在の耐震基準と同レベルの確認申請と中間検査が行われており、震度6強の地震にも耐えうるレベルであると考えられます

 

 

敷地境界が明確な物件

不動産を選ぶ際に、敷地境界(隣家との境界ポイント)が明確になっていることは非常に重要です。中古住宅や土地を購入する際、特に注意が必要なのは、隣地との境界が不明確である、または過去に境界を巡ってトラブルがあった物件です。

例えば、敷地の境界線にU字型の排水溝が設置されている場合、その溝が敷地側にあるのか、隣地側にあるのかが明確である必要があります。対象敷地に属しているはずなのに、隣地からの雨水が排出されているというケースは意外にも多く見受けられます(逆の状況もあります)。

敷地境界の確定が重要である理由は、過去から現在、そして将来にわたってトラブルの原因となり得るからです。単に排水溝の位置だけでなく、境界を確認する際には購入者が不利になるケースが多いです。隣地所有者は、「昔からここが境界だ」と主張することがあり、所有者本人が既に亡くなっていて真意を確認できない場合、しばしば理不尽な場所を境界だと主張されることがあります。そして、そういった土地は境界測量図も明確ではないため、お互いが納得する境界を決めることが求められます。しかしながら、不動産取引に際して仲介する不動産会社は、隣地所有者の同意が得られなければ取引が成立しないため、相手の主張を受け入れざるを得ないケースが多く、結果として購入者の敷地が縮小される可能性があります。

敷地境界を明確にする際には、測量事務所(土地家屋調査士事務所)が介入し、対象敷地と隣接する所有地の測量図を合成して境界点を復元し、隣地所有者との協議を行う場合がありますので、このようなサービスの利用も検討すべきでしょう。また、公簿に記載されている敷地面積と実際の測量面積に差異がある場合もあるので、購入前には慎重な確認が必要です。いったんトラブルになると、境界の確定が非常に困難になるためです。

また、別の問題として、隣地所有者と本物件所有者が生存している間に境界点を確定しておかなければ、どちらかが亡くなった場合、相続人が増え、全員の同意を得ることがより困難になることがあります。この状況は現実によく起こり、権利者が不明で境界の確定ができないケースも将来的には考えられます。

したがって、購入者としては、可能であれば敷地の全周(道路部分を含む)の境界確定作業を行うことを購入条件に含めることを強く推奨します

 

 

専門家による既存建物の現況調査を実施して購入

中古建物の購入を検討する際は、建物の現状を把握した上での取引が非常に重要です。見た目だけではなく、建物のメンテナンス履歴にも注意を払う必要があります。メンテナンスとは、劣化しやすい箇所の交換、塗装の再施工、建物の主要構造部の定期点検などを指します。

ただし、繰り返し雨漏りの修理や設備の不具合点検をしている家が必ずしも良い状態のメンテナンスをされているわけではありません。これはあくまで修繕であり、本来のメンテナンスとは異なります。

例えば、当社の事務所は2014年に建てられ、9年間で板塀の塗り直しを除いて大きな修繕工事は行っていません。小さな修繕作業は自分たちで実施し、外壁の劣化や雨漏り、壁の傾斜、床の沈下、シロアリの発生、結露、排水の詰まり、設備の故障などの問題は一度も経験していません。事務所は今でも新築当時と変わらず、夏の暑さも冬の寒さも影響せず快適な空間を保っています。

中古住宅には新しいものから古いものまでさまざまな物件がありますが、購入する際にはその建物の健全性を見極める必要があります。これは、今後の生活に直結する非常に重要なポイントです

例えば、雨漏りの存在を知らずに購入した場合、大雨の度に室内に雨水が侵入するリスクがあります。修理を何度も繰り返しても問題が解決しないこともあり、その都度コストがかかることは精神的にも経済的にも負担です。

建物の劣化の一例として雨漏りを挙げましたが、購入前にこれらを買主自身が全て確認するのは難しいため、専門家による既存建物の劣化状況の検査が推奨されます。これを「インスペクション」と呼びます。

ただし、インスペクションは基本的に目視による検査であり、見えない部分の確認は限界があることを理解しておく必要があります。不動産仲介を行う際には、取引前のこのような確認を推奨し、重要事項の説明時にはこれらの点についても触れ、売主の確認を得た上での購入をお勧めします

 

 

まとめ

2000年以前の住宅を購入検討される方は特に留意すべき点があります。

まず、断熱性能が現代の基準に比べて大きく劣ることが多く、外壁、床下、窓などの断熱対策が不十分で、特に冬場は非常に寒くなりがちです。室内温度が外気温と変わらないと笑って話す住まい手さんもいるほどです。
賃貸住宅から中古住宅への移住を考える際は、これらの点に勇気を持って取り組む必要があるでしょう。

リノベーションを行う際、私は断熱と気密性の向上(そして耐震性の強化)を重要視しますが、これらの工事は家全体をカバーするとなるととっても高額のコストがかかります。といって、壁紙の張り替えや床材の交換だけで済ませようと考えるのは危険です。

リノベーション費用が物件の購入費用を上回るケースも少なくなく、資金計画が中古住宅選びの大きなデメリットになり得ます。しかし、断熱と気密性を高めたリノベーションが施された住宅は、たとえ広々とした空間であっても外気の影響を受けにくく、一年を通して快適に過ごせます。

良質な中古住宅を探す際は、これまでに挙げた4つのポイントに注意を払って選んでください。他にも考慮すべき要素は多々ありますが、これらの基本を押さえていれば、良質な中古住宅を見つけることができるでしょう。
そして、適切なリノベーションを行うことで、より快適な住環境を手に入れることができます。

 

浅野勝義/奈の町

 

 

 

 

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