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『建築がむずかしい土地』の相談

奈の町では、住まい手さんの敷地条件がとても難しい設計をお請けすることがあります。

【敷地の条件がとても難しい設計】とは。

建物の条件が難しいとか、住まい手さんの希望要件が難しいと言うのではありません。
お持ちの敷地が、新築する、または建て替えるに際して、とっても難しい条件のことです。

実例を挙げてみましょう。
.その敷地が市街化調整区域内にある。
.前面道路が狭く、セットバックが大きくて建替えできるほどの敷地が残らない。
.敷地が変形している。
.敷地が道路に接していない。
などがあります。

それでは、なぜ建替えがむずかしいのかをお話ししたいと思います。

  1. 1.の市街化調整区域内の土地の場合ですが、
    都市計画法では市街化調整区域内での建築は、原則禁止されています。
  2. 但し一定の条件(例えば農林漁業従事者の居宅等)に当てはまれば建築が可能であるという緩和規定があります。
  3. 注意して頂きたいのは、この緩和規定はとても厳しい条件で制限されており、建築は
    簡単ではありません。前提で建築主は農家である必要があります。簡単に建築できるという税理士さんの話などは、本当ではありません。
    更に、農家であれば建築はなんでも大丈夫という事でもありません。
  4. 例をあげますと、建て替える予定の敷地内に無許可で建てた別棟の倉庫建物があるケース。 無許可で増築の上に更に建て増しの後、母屋の建て替えというのが多いのです。
    無許可で建てられた建物は本来建築不可のものですよね。
    これをどうするのか?
  5. ご相談に来られた方は、税理士さんなどのアドバイスで、「条件次第」と聞かずに建て替えできると聞かされて来られます。実際に申請に取り掛かるとなれば建築許可まで長い時間もかかりますし、条件によっては建て替えがダメな場合もあります。

    市街化調整区域内での建築許可は、実は一番難しい条件の一つなのです。

 

  1. 2.は前面道路の幅員が4m未満で道路後退が必要となるケースですね。4m未満の道路は、車の進入を長い機間拒んできた区域でもあります。
    道路の交差点も曲がり辛く、軽自動車でしか通過出来ない場所もあります。

    この様な4m未満の道路は42条2項道路(確実ではありません)と言い、現況道路からの中心後退とは、火災等の救急時に消防車や救急車が進入できずに大切な命が失われる事の無いようにお互いで道を出し合って拡幅する事を目的に造られた法律の条文ですので、道路の後退部分には建物はおろか門屋や塀を建てる事は出来ません。

  2. その道路後退が適用される土地で、道路に面する距離が長いほど後退部分も広く、
    有効に使える土地も小さくなってしまいます。
    まして前面道路が狭いと道路斜線の影響も受けますので、有効に使える縦の空間も小さくなることが考えられます。特に間口が広く奥行きの浅い土地であった場合、建物を計画するのは思いの外難しいもの。
  3. 如何に決められた空間に想いを実現出来るかがカギとなります。
    設計者が燃えるのもこういった物件に多いのではないでしょうか。

4m未満の道路

  1. 3.は変形した敷地ですね。敷地は常に長方形のような矩形の形をしている訳ではありません。
    三角地や旗差地等の変形地というだけでなく、道路と敷地の高低差が大きな土地もあります。私も最近、敷地と道路の高低差が大きなケースがありました。
  2. また、道路から敷地が見えないくらい下がっている崖地のような土地もありました。
    道路に平行に面する平地が殆ど無いといった土地ですが、一般の業者であれば大きなコンクリート擁壁を築造して敷地をフラットにし、その上に建物を計画するのでしょう。しかしそれでは擁壁に要する費用が膨大になってしまい、建築に要する費用がなくなってしまいます。そこで、敷地の形状をそのまま利用した建物を計画する事もできます。
    何より、土地にかかる費用が激減する事ができますから。
nanomachi.co.ltd

敷地のほとんどが崖地になっています

nanomachi.co.ltd

崖地の地形をそのまま生かした設計


 

  1. 4.は道路に接していない敷地です。
  2. 建築基準法には、敷地は道路に2M以上接しなければならないと定められています。
  3. 例えば、敷地と道路との間に水路などがあると、その敷地は道路に接しておらず、このままでは建築は出来ません。
  4. 建築をするには水路を渡る進入部分の許可(占用許可)を取る必要があります。この占用許可ですが、許可には水路との境界を確定するために『水路の官民明示』が必要です。
    水路明示には水路の幅員と対側にある道路の幅員、そして対側側の所有者の明示が
    必要となります。
  5. 一番難しいのは対側側の所有者の境界確定で、相手が明示を拒んだ場合は境界が確定できずに建築が出来ないことになります。実際、奈の町では明示を確定するのに1年以上かかったケースも過去にありました。

敷地と道路の間に水路があるもの

幅員2m以下の道

他には、
〇敷地の前には道路があるが、この道路は建築基準法上の道路になっていない。
〇敷地は隣接する土地との高低差で擁壁があるが、この擁壁が法律に則って造られたもの
では無い。(無許可で造られたもの)

高低差2m以上の間知石積み擁壁(開発検査を伴わないもの)。再構築が必要になりました。

最大2.5m高さの擁壁(開発検査済)

 

ところで、
自分の所有する敷地なのに、建築するのが難しいことって結構あるもの。
もっと自由に建てられるかと思っていませんでしたか?

市街化調整区域だといっても自分の土地なのに、そもそも許可など必要なのか。
また道路として後退しなければならないなんて、後退しなければ広く敷地が使えるじゃないか。
なんて思っていませんでしたか?

だって、自分の所有する土地ですものね。

では、考え方を少し変えてみましょう。

そもそも土地とは誰のものでしょうか?

所有権があれば自分のものですよね。
ご先祖から受け継いできたものだから自分のものに決まっている。
確かにそうですよね。

私の考えですけど、
『土地』というものに対して私はこう思っています。

土地は日本という国の所有物で、私達はこの土地を自由に使える証明として所有権という形で保証をしてもらっている。
簡単に言えば土地の大家さんは国、私達は賃貸で土地を借りているようなもの。
その権利が所有権だと。

実際、土地を所有すると固定資産税を支払います。
 固定資産税=家賃
大家さんに家賃を払わなければ退去しなければなりません。
同じように固定資産税を支払わなければ、家を差し押さえられますよね。

それぞれの土地は国に、様々な法律と言う縛りに規制されており、使用者(この場合は所有権者)はその法律の範囲の中で自由に使用する権利が与えられていると考えるのが納得できる。
と私は思っています。

土地の所有権というのは、決して自分の好き放題出来る権利ではないと。

時々見かけませんか?
自分の敷地だと建築確認など無視して、自由に建物を建てる人。
道路後退が必要なのに、建築後、道路後退部分(道路として扱う区域)に塀を建てる人。
今もいます。

ここで少し話はそれますが、何故道路後退が必要なのか。
道路後退が必要な土地は前面道路が4M未満の狭い道路であり、現況道路から道路の両側の所有者がお互い後退して4Mの道路になれば、その区域内で火事になったりした場合緊急車両が入ることが可能になります。
そうする事で道路に面する所有者の生命が救われる可能性が上がるのです。

「土地は日本という国の所有物」と考えると、スムーズに納得できることが多いですね。

さて話を戻して、

国の各種法律を守り、家を建てたいと考えた時、自分の敷地では難しいのではないか。
そんなお悩みの方は、一度奈の町にご相談ください。

奈の町では、市街化調整区域内に建てる建物(農家住宅や住まいでないものを含む)の設計も
多数事例があります。
許可に至るには細部まで調査して行政と密な交渉が物を言うケースが多く、私は毎回諦めることなく交渉してきました。

ですが、どうしても建築不可能な場合もあります。

諸条件でお困りであれば、設計の専門家として貴方のお力になれる可能性はあると思います。

浅野勝義/奈の町

 

 

 

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