持家相談 リフォームするか建て替えするか、迷ってられる方へ
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リフォームするか建て替えするか。
迷ってられる方へ
『既存建物をリフォームするか、思い切って建て替えするのか悩んでいます。』
このようなご相談を受ける事があります。
中古住宅を買って、リフォームするか建て替えるか、といったお話しも同様です。
そんな方へこの話がご参考になると嬉しいです。
◆「リフォームする」か、「建て替え」かの分岐点とは?
分岐点として考える点は、
1. 建物の建てられた時期で判断する
2. お金を掛ける費用対効果は建て替えとリフォームどちらがお得なのか
3. そもそもその家が必要なのか(居住するかしないか、それだけの広さが必要か)
4. その建物にどれ位 愛着があるか、良材が使われているか等
ではないかと思います。
私は今までの沢山の方のご相談バターンから、
この4つくらいの判断から考えれば良いのではないかと思う様になりました。
貴方の悩みがどこに当てはまるかで判断するのが良いと思います。
1. 建物の建てられた時期で判断する
建物の安全性や耐震性を考えると、建築時期である程度の判断が可能です。
木造在来工法には、建築された時期で建築基準法の耐震基準が変わっていますので、それを
基準に判断する方法です。
勿論、その建物の傷み度合いも大きな判断理由にはなります。
傷み度合いの判断は、住宅診断や専門家に調査してもらうのが良いでしょう。
また、伝統工法である古民家の場合は、建築時期が古くても建物の傷み度合いが良ければ
リフォームをお勧めするケースが多くあります。
現在まで築80年、100年、120年、250年(何れも改修時点)と古民家を改修させて頂きました。
柱の傾斜しているもの、柱・床。梁・母屋等が下がっているもの等有りましたが、ある程度
お金を掛ければしっかりした建物へと改修は可能です。
a) 1982年(旧耐震)以前の建物・・・(旧耐震基準)1981年5月申請以前のもの
耐震性の評価点は0.5以下で、倒壊の可能性大です。
特別なこだわりの無い限り、在来工法であれば建て替えをお勧めしたいと思います。
b) 1982年から2000年までに建てられた建物(S56年の新耐震基準)
一番悩ましいのがこの期間に建てられた建物です。
耐震性の評価点は、建築された時期や建物の程度で0.5程度から0.9くらいの幅があります。
一般診断をすると、0.5を割り込む場合も多くあります。
しかし、改修をきちんとすれば評価点1.0への耐震補強は可能です。
現状の建物の調査をしっかり行い、耐震補強と断熱・気密の工事を行えば快適に暮らす
事は可能ですが、屋根、外壁等の傷みが多い場合は改修費用が多く掛るので費用対効果
は薄くなってしまいます。 少なくとも今後のメンテを考えた材料選びも必要でしょう。
c) 2000年以降の建物(強化された新耐震基準)
耐震性の評価点は、1.16と安全ラインの1.0を超えています。
これならリフォームをお勧めしますし、住宅性能(断熱・気密性能)を上げる事で快適な
住いへと変わることができます。 費用対効果も十分期待できます。
各世代別評点の図
各世代別評点 ㈱インテグラル 「(昭和56年以前の住宅はなぜ地震に弱いか」より抜粋
評点 | 判定 |
1.5以上 | 倒壊しない |
1.0以上~1.0未満 | 一応倒壊しない |
0.7以上~1.0未満 | 倒壊する可能性がある |
0.7未満 | 倒壊する可能性が高い |
2. お金を掛ける費用対効果は建て替えとリフォームどちらがお得なのか
実はどちらとも言えません。
建て替えには解体費が、リフォームには建物の改修規模によって費用対効果が変わります。
a) 建て替えの費用対効果
建て替えをする場合は、既存建物を解体することが始まります。
解体は分別とその処分場の制限もあって以前よりかなりお金が掛かるようになりました。
建築予算としてそれなりの予算があっても、以前の建物の解体費用が400~500万以上も
掛かるとなれば、本体に掛ける費用がその分大きく失われます。
解体して処分するだけの為に掛かる費用ですので、建てる建物とは全く関係のないものです。
この解体費のウェイトが大きくなるほど費用対効果は悪くなります。
中古住宅を買って建て替えを考える際は、必ず解体費の見積もりを先に取り、購入費以外に
掛る費用を忘れずに計上しておいて下さい。
中古住宅を買って建て替えを考える場合は、既存建物の規模、前面道路の広さなど、
解体費用がお安くできる条件にあるかもチェックしておきましょう。
解体後に新築する建築費用は、自由に建築が可能で、規模も仕様も選ぶことは出来ます。
費用を掛けて建てる事もローコストで建てる事も建築主の判断で決めることができます。
b) リフォームの費用対効果
リフォームの費用対効果は高く、とっても快適に、そして同時に安心感も得ることができます。
但し、外壁のやり替えや屋根材の葺き替えなどは、大きな費用になってきます。
柱などの傾斜を直す建物の建ちを修正すると、外壁は歪を改修したことから全体にクラックが
入ります。この補修は必ず必要です。
また、屋根材、特に瓦が古い場合等は、屋根瓦の葺き替えはとても高額になる場合があります。
建物によっては葺き替えだけでリフォーム予算が無くなってしまうケースだってあるのです。
大きな家(床面積)の改修は、面積に比例して改修費用は増大します。
経験上、100㎡程度の耐震補強を含めた全面改修(屋根は含まず)で、約1500万~程度の費用が
一般的に掛かります。200㎡なら3000~3500万、300㎡なら4500万以上にもなります。
大きな住まいの場合は改修範囲も広く改修費用は高額となる為、費用対効果は低くなります。
費用対効果を上げるには、暮らしの範囲に改修規模を絞って行うと効果的です。
3. そもそもその家が必要なのか(居住するかしないか、それだけの広さが必要か)
a) 空き家の場合
住んでいる住まいは別にあるのだけれど、所有している家(空き家)を改修すべきかどうかの
ご相談というのもあります。
空き家の再利用も同様ですが、ポイントは改修したその家に自分達(住い手)が住むのか、
また、改修した後に賃貸等で貸すことを考えてられるのか。
その辺りも重要な判断材料でになります。
b) 住まない(住む予定の無い)家の場合
住まない(貸さない)のであれば、リフォームに掛ける費用はその建物を維持させるだけの
最低の費用で良い訳ですし、なんなら解体してしまう方が敷地の有効利用が可能です。
ただ、建物がある事で固定資産税が安くなっているために解体しないケースもありますので
単純に解体の選択が採りにくいのもこの空き家の問題点です。
もし、対象物件が特定空家等の判断を受けている等で、自治体から解体の補助金が出る
場合があるので調べて見ると良いでしょう。
c) 既存建物が大きい家の場合
また、使われる家族の人数に対して既存建物の規模が大きすぎるケースもあります。
大きすぎる家は全面リフォームすると改修費用がどうしても膨大になります。
反対に、その建物の一部だけを改修するのであれば少額で済みますよね。
問題なのは、大きな家の一部だけ改修して、その範囲内だけで耐震補強をするのは注意が
必要です。 一部を耐震補強すると全体の強度バランスが偏りしてしまいます。
これを偏心率が悪いと言い、建物の重心との距離が離れると地震時にねじれが生じます。
改修はただ筋交いや金物などを入れて強くすればよいだけではなく、強度バランスを考えた
改修が必要です。
d) その大きさが必要でない場合
広すぎる住いのリフォームか建て替えの判断は、住むべき家族が必要な規模であるかどうか
を考えて、建物のすべて使うような計画で無ければ減築してコンパクトにする方法があります。
もちろんコンパクトな家に建て替えてしまう事も視野に入れてみるのもありです。
大き過ぎる家は、メンテにおいても長期に渡ってお金が掛かりますから。
4. その建物にどれ位 愛着があるか、良材が使われているか等
a) 建築時期や傷み度合いだけでは割り切れないもの
リフォームか建て替えかの悩ましい建築時期として、1982年~1999年の建物とお話ししました。
この期間の建物について、判断の一つは建物の傷み度合いがあります。
傷み度合いが悪ければ、はっきりと建て替えをお勧めします。
しかし、住いの判断はそれだけでは割り切れないものがあるのです。
b) 建物に対する想いや愛着
この項のテーマでもあります、「この建物に対する愛着」は、建物に対する所有者の想いに
関係するものです。
例えば、祖母が大切に使っていた家を再び使う事に意味がある訳で、建物の傷み度合いとは
別の判断基準が関係します。 何とか残して再び使いたいと思うのは当然です。
c) 当時、良材と大工を選んで普請した
また、建築当時に手に入った材料でも現在ではその殆どが手に入らない材料となっている
場合や、相当手を入れた大工仕事の家であった場合等は解体するのが惜しいケースもある
訳で・・・
20年ほど前であれば、花梨の一枚板や花梨の150mm幅4m長さの無垢フローリングだって
手に入りました。 神代杉やブビンガ、紫檀の無垢フローリングも購入できた時代でした。
今ではそんな材料は手に入る事はありませんよね。
建築当時、全国から良材を集めて家を建てたという住まいも結構あるものです。
こういった場合は、何とか残す方法を模索します。
愛着もあってお金も掛けた建物であれば、残す理由も意義もありますよね。
多少お金が掛かったとしてもリフォーム一択で改修を考えたいと思います。
◆建築コストについて
実際にリフォームで掛かる費用についても、ここでお話しておきたいと思います。
古民家改修、中古住宅改修のどちらもだいたい当てはまる概算で、改修範囲が100㎡
程度として表記します。
1 | 柱の建ち修正、床の組み直し | 180万 |
2 | 外壁の補修・やり替え | 200万 |
3 | 開口部(窓・玄関戸) | 230万 |
4 | 耐震・断熱改修 | 350万 |
5 | 設備工事 | 150万 |
6 | 内部下地・仕上 | 250万 |
7 | 住設機器(キッチン・浴室・便器・給湯器等) | 200万 |
8 | 解体 | 120万 |
9 | 諸経費 | 120万 |
合計 | 1800万 |
※何れも材工共、屋根の葺き替え無し
※奈の町でリフォームする場合の基本になる工事費は、実際これ位~になります。
対比として、建て替えで30坪程度の新築を考えてみました。
新築する為の費用ですが、解体費用の割合が大きく影響します。
1 | 本体工事(坪60万) | 1800万 |
2 | 付帯工事+設備工事 | 600万 |
3 | 解体工事(既存建物が30~40坪程度) | 250万~400万 |
4 | 諸経費 | 250万 |
合計 | 2900万~3050万 |
※解体費は解体建物の規模と敷地条件で変動します。
建築費に対する割合比を考えてみますと、建て替え工事費が2900~3050万とすると、
1800万/2900万x100=約62%、
1800万/3050万x100=約59%
となりました。
これからいえる事は、新築の約6割程度でリフォームが可能と考えられます。
そう考えるとリフォームはお得かもしれませんね。
◆4つの判断を総合して、建て替えかリフォームを判断する
分岐点として、4つの判断を上げてみました。
1. 建物の建てられた時期で判断する
2. お金を掛ける費用対効果は建て替えとリフォームどちらがお得なのか
3. そもそもその家が必要なのか(居住するかしないか、それだけの広さが必要か)
4. その建物にどれ位 愛着があるか、良材が使われているか等
貴方の悩みはこの判断のどれに当てはまるでしょうか?
目的の建物がどれに当たり、内容がどちらの判定をしているかが、私のお伝えできる
回答になると思います。
また、それに係る予算は幾ら位掛るのかも、気になると思いましたので上の項目で
実際の事例を出してみました。これも判断材料になると思います。
結構お金が掛かるものだと思われたと思います。
(上記の費用には、設計料・申請費は含まれておらず、消費税も別途にかかります)
お金の事で言いますと、自己資金でするか、ローンを受けて行うかによっても判断が
動く事もあるでしょう。 ローンの場合は、計画案と共に銀行での融資相談が必要です。
建物の状況(傷み度合い)やローンの相談、税金の相談等色々ご心配事があると思います。
御自身で判断付かない場合は、ご相談ください。
浅野勝義/奈の町