サブタイトル
減築して音楽室と暮らしやすい空間を
石井式リスリングルームを基本に音響設計
生駒郡三郷町 2008年7月完成
住まい手さんの要望
●本格的なオーディオルーム
●石井式リスリングルームを基本に音響設計
●耐震性能の向上
●床等の傷んでいる部分の改修
現況建物の様子と設計コンセプト
築45年の住宅。現在まで幾度となく増改築を重ねてきた様ですね。
お伺いすると2階にオーディオルームはありました。
高級な機器を見せて頂き驚きました。 そこで音楽を聞かせて頂きましたところ、
2階の床も壁も振動していることが分かります。 改善するには1階に移動して、地面に着くのが
良いと考えました。 徹底した振動を抑えることと防音性を確保する必要がありそうだ。
また、室内には度重なる増築で光が入らない部屋や使われていない部屋ができている。
これも解決が必要だろう。
また、住居部を暮らしやすくするためのリフォーム(リビングダイニングはもちろん、浴室・洗面所
・便所・台所・玄関等)により、気持ちよい空間をつくる。
そして現況建物の断熱性向上と耐震補強工事が必要だ。
住まい手さんからの強い要望
1. オーディオ・ハイエンドに対応した音響・防音性能を持つ音楽室の新設。 (石井式リスニングルーム)
2.安定電源を確保するために敷地内にトランスを持つ【マイ柱】の設置。
さて、企業の研究者である住まい手さんは、大変なオーディオマニア。
御自宅のリビングルームには良い音を求めて資財を惜しまず購入した機材が所狭しと並んでいます。
しかし、ご自身の求める音は現在の部屋を改善しない限り満足できないと感じてられました。
行きつけのショップにも相談したものの、オーディオへのこだわりを理解してくれ、且つ、建物を改善
してくれる専門家を探しては?
というアドバイスにも見つからず・・・
そこへオーディオマニアで建築家である、私に住まい手さんの目が留まったのです。
*** befor ***
現状 1階ダイニング部。
ダイニングですが現在はほとんど使われておらずもっぱら子供達のゲーム部屋になっていました。
2階のDKです。
殆どご家族はここで生活をしています。
私は1階に広いリビング・ダイニングキッチンをつくることで、家族がこの場所で集まることが
出来るように計画したいとおもいます。
中の間。
いつも暗く、特に使うことの無い部屋でタンス部屋になっていました。
以前のオーディオルームです。 素晴らしい機材と音ですが、その音圧に部屋全体が響いています。
また、音洩れも大きくその為には改善が必要です。
まずは1階へ持ってくると同時に既存建物を一部解体しました。
解体したスペースに新たな建物を建てます。
それがこの空間で、基礎から徹底的に強い建物をつくります。
防音・遮音・気密・音響(石井式リスニングルーム)、空間の各寸法比率、150インチのスクリーン、
吸音性能、マイ柱(関西電力初)、ブレーカー、電源プラグ、アースに各ケーブルの配線、
そして床壁天井の仕上げ材に至るまで徹底的にこだわりました。
是非、見て頂けるとそのこだわりが分かると思います。
結果、
ハイエンド・オーディオ用の音楽室として音響的にも防音性能も満足できる空間が出来ました。
日本橋の有名オーディオ店のインストラクターも認める環境だそうです。
画像には壁に埋め込まれる7.1ch用のスピーカー、150インチサイズのスクリーン映写用のプロジェクター台、
ホームシアター用機材を収納しておくラックなどが見えます。
ちなみに床・壁・天井の全てにカリン(ムク)を張りました。
改築部(減築して増築)した建物外観です。
倉庫のような黒い板張りの木造建物ですが、実は想像できない性能が潜んでいます。
音楽室をつくるにおいて住まい手さんの強い要望がこの【マイ柱】でした。
6600Vのトランスを自宅の敷地内に設置して安定した電源を確保すること。 この要望も達成しています。
ちなみにこのマイ柱は、関西電力で初のことです。
音楽室内の壁床に埋め込まれた36本のケーブルが、各場所へダイレクトに引き込まれています。
このBOX内のケーブルはピュアオーディオアンプ用などへの電源ケーブル。
各機器へはダイレクトで接続しますのでコンセント接続はありません。
(見えているコンセントはオーディオ機器以外のもの用)
ここからは、住いの中について、リフォームされた内容へ移ります。
2階部を吹き抜けとし天井近くに大きな明窓を設けることで、空から光が降ってくる空間を作りました。
また、階段をリビングに架け替えたことで、上下階が一体となり、いつでも気配の感じられる空間と
して生まれ変わりました。
各寝室は二階の廊下に面して作っています。
2階ダイニング・キッチンです。 部屋全体が暗いことと床下がかなり痛んでいたこともあって、
補修と同時に1階へ移動することを提案しました。
既存の梁を磨きなおし化粧とした吹き抜け空間をつくりました。キッチンから入ってきた風が
ダイニング・リビングと通り抜け、この空間を昇って抜けてゆきます。
2階の廊下と1階リビングがグッと近くなりました。
吹き抜け下のリビングです。
もっぱらここは、テレビを見たり、談話したりするスペースです。
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最後に完成後、素晴らしい音を聴かせて頂ける機会がありましたので
伺いました。
ソファに座り、CD(と言っても特別なものでは無く私たちの持っているものと同じ)が
なるまで、室内には “無音” の音が流れていました。
突然、目の前にボーカルの女性が立っていて、ステージで歌い出したかのような
旋律が聞こえます。
私の目の前にいるのです。
鳥肌が立つというのはこういうのを言うのでしょう。
まさに絶句と感動です。
写真では感じ取れないとは思いますが、いわゆるホールやコンサートなどではなく
自分の目の前で、歌手が歌っている・・・
そんな体験ができた一時でした。
浅野勝義/奈の町